心理学関連の職業に就く際、資格がなければできないというものは、基本的にありません。弁護士や医師などの業務独占資格とは大きく異なるところです。心理学やカウンセリングの資格は、一定の知識や経験があることを証明するためのものと考えるのがよいでしょう。
実際のところ、法律上は誰でもできるものの、採用条件として資格が必須となる職場は多いものです。詳しくは個別のページで解説しますが、世の中で活躍するのに有利な資格を中心に、概要をお伝えします。
国家資格
心理学のプロとして初の国家資格をつくった法律として、公認心理師法が成立したのは、記憶に新しいところです。健康保険のが適用される心理療法や心理分析など、これから心理の仕事は公認心理師を中心に展開されていくことでしょう。
公認心理師に先立ってキャリアコンサルタントが国家資格になったのは、2016年のことです。試験内容は職業選択や職業能力の開発などの知識に関する学科試験と、とカウンセリングの実務です。学問としての心理学の延長線上にあるわけではありませんが、職業適性や相談実務は、性格心理学やカウンセリング心理学などの知識・技能が必要となります。
一般社団法人日本産業カウンセラー協会の産業カウンセラーは一時期、労働省(今の厚生労働省)の認定資格であったことがありましたが、国家資格(法令で定められた資格)だったことはありません。
大学卒業レベルの資格
前述のとおり、大学で一定の単位をとり、日本心理学会に申請すると、認定心理士の資格を取れます。
「認定心理士」について詳しく解説した記事はこちら
資格とは少し違うかもしれませんが、大学で心理学系のカリキュラムを学んで卒業後に2年以上、少年鑑別所など一定の職場で実務経験を積むと、公認心理師の受験資格を得ることができます。
大学院修了レベルの資格
カウンセリングの最高峰資格であるとされる臨床心理士は、大学院で臨床心理学を学ぶことによって受験資格を得ることができます。公認心理師は大学院に加えて、四年制大学でも心理学を専攻する必要があります。
他に、取得にあたって大学院修了が求められる資格としては、臨床発達心理士や学校心理士などがあります。
「臨床心理学とは?」という疑問について詳しく解説した記事はこちら
臨床発達心理士の役割や資格取得の方法などに関する記事はこちら
専門学校レベルの資格
厳密には心理学系ではありませんが、カウンセリング実務を扱うことのある仕事として精神保健福祉士があります。資格をとるには、専門学校などで学び、国家試験に合格する必要があります。
学会系の資格
学会に認められた資格は、大学や専門学校卒業レベルと同等かそれ以上に権威があります。日本学術会議に参加することによって、公的に認められた心理学系の学会は20団体を超え、多くが資格制度を持っています。
よく知られているものとしては、日本カウンセリング学会認定カウンセラー、日本交流分析学会の交流分析士、日本家族心理学会の家族心理士、日本EMDR学会のEMDR臨床家資格、メンタルケア学術学会のメンタルケア心理士などがあります。
その他の民間資格
これまでは国家資格と学術的な裏付けのある資格を見てきましたが、それ以外の民間資格も数多くあります。通信教育で取得できる比較的カジュアルなものから、数年間の実務経験が必要なハードルが高いものまで、さまざまです。
前述の産業カウンセラーも国家資格や臨床心理士に次ぐ知名度を持っていますが、その他の民間資格に位置づけられます。
大阪商工会議所が開催するメンタルヘルス・マネジメント検定や前術の心理学検定のように、筆記試験のみの検定もあります。この2つは誰にでも受験できます。