社会心理学とは?仕事や役に立つ理由も紹介

心理学を勉強してみたいと思う人の中には、集団心理や人間関係に興味がある人もいるでしょう。そのような人におすすめの分野は「社会心理学」です。具体的な研究内容や研究方法、学ぶ方法、さらに関連する仕事や入門に最適な本などをお伝えしますので、学びを深めてみたいという人は参考にしてください。この分野はビジネスに役立つ知見も盛り沢山です。

ざわめく多くの集団と個人
Gerd AltmannによるPixabayからの画像
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社会心理学とは

社会心理学は、「複数の人間が関わりを持つことによって起こる」心の動きや行動特性などについて研究する分野です。他の心理学と比較すると、「社会の中における」という点に特徴があります。

とても身近な社会心理学の研究テーマ

社会心理学における研究対象は、大きく分けると「個人対個人の関係」と「集団同士の関係」の2つです。人間関係の悩みを持つ人は、老若男女を問わず一定以上の割合で存在します(厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査より)」。それゆえに、社会心理学で扱うテーマは、とても身近に感じるものが多いです。以下、それぞれ例を挙げます。

影響し合う個人対個人

社会というと学校や会社など多人数の集団を想像するかもしれませんが、2人いれば立派な社会です。人を好きになったり憎んだりする気持ちは、どうやって生まれるのでしょう。社会心理学はこのような謎を解く鍵を持っています。

反発し合う二人

対人魅力

呼び名の通り、他者に対する好き嫌いの感情がなぜ起こるのかを研究します。アッシュの印象形成やザイアンスの単純接触効果(会う回数が多いほど好意を持ちやすくなる)などが有名です。

アッシュが提唱した初頭効果を役立てるテクニックについてはこちらの記事をご覧ください。↓

態度

態度とは一言で表すと「行動の準備状態」です。わかりやすい言葉にすると「物事に対する好き嫌い」です。

社会心理学における態度研究では、基本的に「人間には基本的に一貫性を求める傾向がある」という前提を元にしています。その上で、社会環境から影響を受けて態度を変えることがあると考えられています。

例えば、自分が好意を寄せている人がいるとします。その人は犬が好きですが、自分は犬が苦手です。このようなとき、自分の心は調和を欠いて、不安定な状態にあります。人間は、このように矛盾を抱えた状態をストレスと感じ、それを解消しようとして態度を変容させることがあるのです。

この場合、「自分も犬を好きになる」、あるいは、「その人に好意を抱くことをやめる」という選択をすれば、心の均衡がとれることになるでしょう。

社会的認知

社会の中で個人が他人や集団を認識し、理解する仕組みを研究します。フェスティンガーの認知的不協和理論や、帰属理論におけるギルバートの3段階モデルなどが挙げられます。帰属理論は自分以外の行動や態度における因果関係や評価に関する考え方です。

「認知的不協和理論を仕事に役立てる方法」についての記事はこちら↓

個人対個人の研究領域には以上の他にも「コミュニケーション」や「自己」などがあります。

人種差別はなぜ起こる?集団同士の関係

人が大勢集まると、一人のときとは違った判断をすることがあります。どう違うのか、なぜそのような違いが起こるのか。集団心理の研究も社会心理学が持つ領域の一つです。

2つの集団に分かれて争う人たち

集団意思決定

集団で話し合ったときに出やすい結論の傾向を探ります。当時米国の大学院生だったストーナーは、数名で討議をすると決定事項に慎重さが失われやすくなることを発見し、「リスキー・シフト」と呼びました。

社会的アイデンティティ

人種や国籍による差別の問題がたびたびクローズアップされています。私たちが肌の色や特定の出身国について統一的な印象を抱いてしまうのは、なぜでしょうか。

集団には、自分が所属する「内集団」と、それ以外の「外集団」とがあります。内集団の人に対してよりも、外集団の人に対しての方がステレオタイプ(偏見や思い込み)的判断が強くなりがちです。米国の心理学シェリフによるサマーキャンプ研究をはじめ、複数の調査で明らかになっています。

例えば、外集団であるA国の一部の人たちが目立つ犯罪を行ったとすると、「A国民は暴力的な人が多い」とか、「だからA国民は」という感想を持つかもしれません。一方で、自分が所属する内集団で同様の事件があったとしても、「この国にもいろんな人がいるから」とか、「悪いことをする人はほんの少しだけ」などと思うことでしょう。

一般的に人間は内集団の特性を多様に捉える一方、外集団に対しては過度に単純化して考える傾向があります。そのため、このような「レッテル貼り」が起こるのです。

リーダーシップ

個人が集団に与える影響を分析します。「リーダーの知能と集団の業績にはどのような関係があるのか」「リーダーのタイプによって集団の行動に差は出るのか」などの調査がなされています。経営学とも関連が深い分野です。

社会心理学の研究手法が世の中の役に立つ理由

社会心理学が社会の役に立つ様子をイメージできるよう、具体的な研究手法をお伝えします。主に用いられるのは「相関的研究方法」と「実験的研究方法」の2種類です。

相関的研究方法とは、2つ以上の事象の関係を調べる方法です。例えば、「テレワークの日数」と「抑うつ的な気分」とに関係があると仮定して、アンケートなどを用いて調査を行います。

実験的研究方法とは、文字通り「実験的」に条件を作り、調査することです。まず、実験に参加する人たちの集団を2つの群に分けます。先ほどの例で言えば、一方は通常通り出社してもらい、もう一方にはテレワークをしてもらって、両者との間に抑うつ的な気分との関連について違いがみられるか、調査を行います。

実験的研究法は統制した条件下で厳密に調査できるメリットがあります。一方、相関的研究法の強みは手間や費用を抑えられることです。

上記のような調査を行い何らかの傾向を見いだせれば、問題解決に役立てられます。仮に「テレワークの日数が多いほど抑うつ傾向が強い」という結果が出たら、「出社の頻度を増やす」「さらに分析や調査を重ね、テレワークのどのような要素が抑うつをもたらすのか調べて対応する」などの対策ができるでしょう。

社会心理学をしっかり学ぶと、このような調査手法や統計解析の技能が身に付きます。

社会心理学の知見を活かす仕事

社会心理学には対人関係以外にも産業や広告、消費の心理学とも親和性があります。体系的に学べば、企業内の人事部やマーケティング、商品企画や広報など幅広い領域で活かせるでしょう。

グラフの対比

マーケティング・商品企画

態度の研究を取り入れることによって、消費者の好みを把握しやすくなります。新商品の開発や販売経路の開拓などに役立つでしょう。他にも社会的アイデンティティや社会的認知など、購買行動に関わる知見が盛り沢山です。

総務・人事・経営企画

先ほどの研究手法の例のように、働きやすい職場環境づくりに向けて試行錯誤したり、リーダーシップを組織作りに役立てたりできます。

家庭裁判所調査官

犯罪心理学や臨床心理学、社会学などの知見にもとづき少年犯罪の背景を調査する国家公務員です。社会心理学はこれらの学問との結びつきが深い分野です。犯罪は個人の性格特性だけから起こるものではなく、家庭や学校などの社会との有機的な結びつきによって発生するからです。

「家庭裁判所調査官の仕事」についての記事はこちら
犯罪心理学の概要や仕事についての記事はこちら

社会心理学を学ぶ方法

社会心理学は基礎心理学や社会学等、近接する他の分野とも関連性が深いので、体系的に学びたいのであれば、心理学系や臨床社会学系の学部を目指すことになります。卒業論文のために行った調査や研究を更に深めるために、大学院に進学する人もいます。

対象が身近なだけに、研究テーマには事欠かないでしょう。ちまたにあふれるリーダーシップや人間関係に関する一般書からも何らかの知見が得られるかもしれません。

大学に行くことが難しい場合は、記事の最後に挙げる参考文献や関連書籍のような入門的な専門書を開いてみるのも良いでしょう。心理学検定や公務員試験の問題などでも今までの研究の蓄積という意味での知識は身に付きます。

マーケティングなどの実務に携わることで少しずつ習得していくこともできるでしょう。

ビジネスや人間関係に役立つ社会心理学

社会心理学は、個人に対する社会からの影響や相互関係を心理学的に捉えることをその目的としています。研究テーマは「好き・嫌い」や「集団による意思決定」など身近で、人間関係を中心とした社会生活の役に立つものばかりです。体系的に身に付ければ、マーケティングや組織管理などのビジネス面、または公務員の仕事などで強みを発揮できます。

参考文献

社会心理学 伊藤 忠弘 (著), 白樫 三四郎 (編集), 外山 みどり (編集) 八千代出版 2003年5月
心理学を学ぶ、活かす。―心理の仕事・資格から学校選びまで 大川 一郎 (著), 松尾 直博 (著), 杉原 一昭 (監修) 日本実業出版社 1999年1月
心理学辞典 AndrewM. Colman (著), 仲 真紀子 (監修), 岡ノ谷 一夫 (編集), 泰羅 雅登 (編集), 中釜 洋子 (編集), 黒沢 香 (編集), 田中 みどり (編集) 丸善株式会社 2005年2月

関連書籍

朝倉心理学講座〈7〉社会心理学 (朝倉心理学講座 7) 唐沢 かおり (編集) 朝倉書店 2005年10月

面白いほどよくわかる社会心理学-集団や社会の中で自然に築かれる人間関係の謎を読み解く 晨永 光彦 (監修) 日本文芸社 2003年8月

ガイド 社会心理学 田之内 厚三 , 和田 万紀 , 鎌田 晶子, 土屋 明夫, 伊坂 裕子 北樹出版 2006年5月

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この記事を書いた人
cocomomo

臨床心理士、公認心理師。上場企業の人事部、児童相談所、私設相談室カウンセラーを経て、現在は主にクリニックにて心理検査やカウンセリングを担当。恋愛に関することから親子関係まで、日々さまざまな悩みに寄り添う。

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