心理学と哲学の違い【表を使ってわかりやすく解説しました】

心理学と哲学はどちらも人間について考える学問です。そのため、「心理学と哲学はどう違うの?」という疑問を持つ人もたくさんいることでしょう。中には大学でどちらを学ぶべきか迷っている人もいるかもしれません。そこで今回は、心理学と哲学の違いについてご説明します。わかりやすいように表も使って比較していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

Philosophyと書いてある脳みそのアイコンとPsychologyと書いてあるハートのアイコン
画像は編集部作成
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心理学とは?簡単に説明すると

心理学とは、人間の心や行動のメカニズムを研究する学問です。人間は一人ひとり違った価値観や習性を持っています。同じ考えや行動をする人間は存在しません。しかし、千差万別の人間にも共通する心理の働きがあります。心理学では、実験を通してデータをとり、実証することで誰しも共通する心理の働きを解明していきます。このような科学的な手法で心理のメカニズムを解き明かすのが心理学なのです。

心理学の歴史と領域

心理学は比較的新しい学問です。心理学はもともと哲学の一部として捉えられていましたが、今では完全に独立しています。心理学の始まりをいつとするかは捉え方によって異なりますが、およそ140年前です。

現在、心理学にはさまざまな領域があります。領域によって研究の目的も手法も異なります。以下、わかりやすいように心理学の領域を箇条書きで表しました。

  • 社会心理学…コミュニケーションや友情、恋愛など集団の中の心理学
  • 認知心理学…記憶や認知の仕組みを解き明かす心理学
  • 神経心理学…先端技術を使って人の脳を調べ、人の行動を生物学的に解き明かす心理学
  • 教育心理学…最善の教え方とは何か追究する心理学

他にも存在していますが、どの領域も人間の心理の働きを探究していることには変わりありません。このように各領域で研究が進められた心理学は、医療や企業に応用されて人の役に立っているのです。

例えば医療の現場では、うつ病や統合失調症などの精神疾患を抱える人々の治療のために心理学が活用されています。企業は「どうすれば労働者の力を最大限に引き出せるか?」「どうすれば生産性の高い組織になれるか?」などよりよい労働環境をつくるために心理学の知識を応用しています。さらに、商品のパッケージや宣伝文にも心理学を応用して開発しているのです。

哲学とは?簡単に説明すると

哲学は、認識や存在、世界、言語など根源的な問いを追究する学問です。「この世の全ての根源は何?」「存在するとはどういうこと?」「神とは何?」「正しさとは何?」といった問いに対する答えを論理的に考えます。近年の哲学では、先人の書いた哲学書をもとに思考を深めていきます。大学で学ぶ場合は、ドイツ語やフランス語の原書を読むことも少なくありません。偉大なる哲学者の書籍から深い思考を学び、さらに自分なりに考えを広げていくのです。哲学は1つの問いを深く考えるため、普段私たちが信じて疑わない「常識」に対して一石を投じることもあります。

哲学の歴史と領域

哲学者の像の写真
アリストテレス(画像出典:CouleurによるPixabayからの画像)

哲学の歴史はとても長いです。世界で最初の哲学者と呼ばれるタレスは、古代ギリシャの人で、紀元前600年ごろに生きていました。そのため、哲学にはおよそ2600年もの壮大な歴史があります。

心理学と同様に哲学にもさまざまな領域があります。もしかしたら想像しているより幅広いかもしれません。以下に箇条書きで表しました。

  • 美学…美や芸術の性質を追究する
  • 認識論…知識と信念の性質について追究する
  • 倫理学…道徳や価値観などを追究する
  • 社会哲学…集団や個人、法など社会的な行動を追究する
  • 政治哲学…国家のあり方や戦争と平和について追究する

なお、これらの基本的な領域からさらに派生して生命倫理学や法哲学、宗教哲学、環境倫理学、歴史哲学、教育哲学などが確立されています。

哲学はどのように社会に影響を与えているのでしょうか?ニーチェ、ロック、カント、ルソー…どこかで名前を聞いたことがあるかもしれません。とても有名な哲学者です。哲学者たちはいつの時代も、人々が信じて疑うことのなかった認識を深く思考し、人間や国家のあり方を問い直してきました。哲学者の思考の中には、社会に大きなインパクトを与え、現代まで脈々と受け継がれているものもあります。社会や理科、数学、国語の教科書に登場する哲学者もいるのです。

心理学と哲学を比較

これまで心理学と哲学についてそれぞれ説明させていただきました。ここで改めて心理学と哲学の違いを表で比較してみました。参考になれば幸いです。

 心理学哲学
歴史140年2600年
扱う内容人間の心や行動のメカニズムを研究する認識や存在、世界、言語など 根源的なことを
追求する
領域社会心理学、認知心理学、 神経心理学、
教育心理学など
美学、認識論、倫理学、社会哲学、
政治哲学など
社会に対する影響うつ病などの精神疾患の治療、労働環境の改善、商品開発などに応用されている。人々が信じて疑わなかったことを改めて問い直し、人間や国家、言語の在り方を追究する。ニーチェやカントなどの思想は世の中に大きな影響を与えた。
表は筆者作成

心理学科と哲学科それぞれの卒業後の進路は?

この記事を読んでいる方の中には、「大学では心理学と哲学はどちらを選ぼう」と悩んでいる方もいらっしゃると思います。そこでこの章では、心理学と哲学を学んだ人がその後どのような進路をたどるのか、どのような仕事に就くのか、一例を挙げてお伝えします。

心理学科で取れる資格

心理学は、「人間科学部」や「社会福祉学部」などの学部で学べることが多いです。学部の名称は大学によって異なるため、志望する大学ではどのような名称になっているか調べた方がいいでしょう。「人間科学部」や「社会福祉学部」などの学部の中に「心理学科」がある場合もありますし、「心理学科」はなくても学科より小さい規模のコースや専攻で学べる場合もあります。

心理学科や心理のコースでは、心理学に関する資格を取ることができます。大学によってとれる資格は違いますので、志望する大学では何の資格がとれるのか調べてみてくださいね。ここでは、青山学院大学の心理学科を例に挙げます。青山学院大学心理学科で取得できる資格は以下の通りです。

  • 認定心理士
  • 社会教育主事
  • 学芸員
  • 司書

認定心理士とは「公益社団法人日本心理学会」が認定する心理学の資格です。職業に直結する資格ではありませんが、人と関わる仕事がしたい人や心理学の専門職に就きたい人は取得しておいて損はないでしょう。興味があれば当サイト内の「認定心理士の活かし方 資格取得のメリットは?」という記事もご覧ください。

心理学を学んだ人の卒業後の進路

実は、心理学科の卒業生の多くは、心理学とは関係のない仕事に就きます。製造業や小売業、情報通信業、サービス業、公務員など多岐に渡る現場で活躍しています。もちろん、中には教育・医療・福祉、学術研究・専門技術サービス業、または大学院進学を目指す人もいますが、西南学院大学の例では全体の16%程度しかいません。

円グラフ
画像出典:西南大学 人間科学部 心理学科ホームページ

哲学科で取れる資格

哲学も心理学と同様に、学部として成り立っていることはあまりありません。大学によって様々ですが「文学部」や「人文学部」の中に「哲学科」があったり、「哲学コース」があったりします。

「哲学者」になるための資格は存在しません。哲学科で取得できる資格はありますが、哲学のための資格というよりも「一部に哲学の内容を含んでいる資格」が多いです。

例として東洋大学の哲学科で取れる資格を挙げます。以下の通りです。

哲学者は、大学の教授として働いていることがほとんどです。大学の教授になる気は無くても哲学に少しでも関係した職業に就きたい場合は、中学校や高校の教師であれば授業で哲学の内容に触れることができます。

哲学を学んだ人の卒業後の進路

  • 中学校教諭一種(社会)
  • 高等学校教諭一種(地理歴史・公民)
  • 図書館司書
  • 司書教諭
  • 学芸員
  • 社会教育主事(任用資格)・社会教育士
  • 社会福祉主事(任用資格)

哲学科の卒業後の進路は心理学科と同様です。人によってさまざまに分かれています。同志社大学の哲学科を卒業した人の就職先を挙げると、「株式会社クスリのアオキ」「株式会社オーアイエス」「日清食品ホールディングス」「株式会社日本銀行」「日本生命保険相互会社」など多岐に渡っています。企業に就職する人が多いです。公務員になる人も中にはいます。

研究の目的や手法が違う心理学と哲学

今回は心理学と哲学の違いについてお伝えしました。心理学と哲学は目的も研究手法も全く異なります。心理学とは、人間の心や行動のメカニズムを研究する学問です。対して哲学は、人間にとって根源的な問いを考える学問です。両者は似ているようで違います。心理学ではデータや実証に基づき研究が進められますが、哲学は歴史上の哲学者たちの書物を読んで発展させて考えます。どちらも違った面白さがあります。もし進学で迷っているのならば、実際に心理学や哲学の本を読んでみて自分に合うものを選ぶことをおすすめします。

参考文献

マーカス・ウィークス (著), ジョン・ミルディンホール (監修), 渡辺 滋人 (翻訳) 10代からの心理学図鑑三省堂 2015年8月

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この記事を書いた人
関目グミ

「学ぶこと」が大好きなフリーライター。「悩みを抱えている子どもを支えたい」との思いから心理学を勉強し、公立中学校の教師として勤めた過去を持つ。大学では哲学を専攻し、卒業論文で学部内最優秀賞を受賞した。

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