認知心理学の基本的な考え方と研究対象

今、この文章を読んでいる人は、「活字」を文字と認識して内容を理解していることになります。しかし、同じ文章が誰かの「手書き文字」で書かれていたとしても、(よほどの悪筆でない限り)同様に内容を理解できるでしょう。それは、目で見てからその文字を認識するまでの間に、広い意味での心のはたらきが関与しているためです。認知心理学では、このように人間が外の環境を認知するまでの心の過程を研究することになります。

考える女性のシルエット
chenspecによるPixabayからの画像 
広告

人間の心理を情報処理のシステムとみなす

認知心理学は、人間が外界の情報を処理する過程をコンピュータのシステムになぞらえながら発展してきた学問です。先ほどの例で言えば、手書きの文字が斜めになっていたり、ゆがんでいたりしたとしても判読できるのはなぜでしょうか。

例えば、「も」という文字を認識する過程を考えてみます。まず、目で文字を見ることで情報が「入力」されます。文字として認識、理解されることは「出力」と表現できます。

入力から出力までの間には、入力された文字の形状が、すでにその人の記憶の中にある「も」という文字情報の形と「照合」される必要があります。

認知心理学では、この「照合」されるプロセスを、心の中にある「システム」として考えるのです。

図は編集部作成(いらすとは「いらすとや」、アイコンは「icooon-mono」より

照合のプロセスはさまざまな形で説明されています。この場合には、「『も』という文字のあらゆるパターンを膨大に記憶の中に蓄積させておく」や、「いくつかのステップを踏んで文字の特徴を統合する」などが考えられます。

文字の認識や理解に影響を与えているのは、その文字の形状だけではありません。見た人の知識や経験、期待などが複雑にからんでいます。例えば、「も」は「し」と形が似ていますが、それぞれ別の文字です。しかし、八百屋さんの店先に「新鮮な『もし』500円」という札を見かけたら、「もも」の書き間違いだと感じられるでしょう。これは、経験による状況判断が認知のシステムに関わっていることを示しています。

認知心理学の研究対象

マークシート試験
F1DigitalsによるPixabayからの画像

認知心理学は、先ほどの例のように人間の「知覚」に関するものの他に、「記憶」や「思考」を研究対象としています。身近な例を挙げて考えてみましょう。

テストを受けるとき、いくつかの選択肢の中から正解を選ぶものと、空欄に記述を求められる形式のものとでは、前者のほうが断然答えやすいと感じたことがあると思います。これは、記憶を再現する際に2段階のステップがあるからだといわれています。

例えばある人物名を思い出すとき、記憶の中にある多くの人物の名前情報から「探索」をして答えの候補をいくつか選び出します。次に、選び出された候補の中から、問われている人物名と「照合」し、正解が導き出されます。記述式の問題なら「探索」から始めなければなりませんが、選択式ならば「照合」だけで済みます。そのため、選択肢が提示されているテスト形式のほうが取り組みやすいわけです。

次に、パズル問題のような、記憶や経験によらないテストを考えてみましょう。見本の形どおりに積み木を組み合わせる課題が出たとします。バラバラに置かれた積み木=「初期状態」から、見本の形=「目標状態」にするには、どうしたら良いでしょうか。

ある人は、片っ端から積み木を合わせていって完成させようとするでしょう。またある人は、途中から見本の形を捉えて効率的に完成させるかもしれません。人間は一般的に、試行錯誤を繰り返しつつも、得た経験を都度活かしながら系統立てて目標状態に近づき、問題解決を図るといわれています。

この他にも、「学習」や「推論」など、脳科学や人間の高次認知機能が研究対象とされており、最近注目を浴びている人工知能にも根源的な意味で深く関わっています。認知心理学の領域や可能性は広がりを見せているのです。

認知心理学を学ぶには?まずは入門書を参照

認知心理学を系統立てて学ぶには、心理系の学部を目指しましょう。お伝えしているように、認知心理学の研究領域は広いため、興味のあることや勉強したいテーマが決まっているのであれば、その大学で学べる内容について情報を集めておくことも大事です。

まず、「心理学」の入門書を一読しておきましょう。心理学に関する学術的な書籍を出版している会社のものであれば、入門書といえども信頼できる執筆者が監修しており、良書が多くあります。

また、日本心理学会では、高校生や一般を対象にした講座を数多く開催していますので、参加してみることをおすすめします。認知心理学は、実践の学問だけに学部だけでは物足りなさを感じる人も多く、学卒後に専門の教員の所属する大学に編入したり、大学院に進学したりする人も少なくありません。

認知心理学は応用領域が拡大しつつあるこれからの学問

脳のイメージ
hainguyenrpによるPixabayからの画像 

認知心理学とは、人間が行っている認知の仕組みを、コンピュータによる情報処理過程をモデルにして考えようとする研究分野です。身近な例として今回とりあげたもの以外にも、「感情」や「感性」といったテーマにも、応用しようとする取り組みもなされています。さまざまな領域での活用が期待されますが、その過程で人間がいかに複雑で葛藤の多い心の仕組みをもっているのかを「認知」させられる学問であるといえるのかもしれません。

広告
この記事を書いた人
cocomomo

臨床心理士、公認心理師。上場企業の人事部、児童相談所、私設相談室カウンセラーを経て、現在は主にクリニックにて心理検査やカウンセリングを担当。恋愛に関することから親子関係まで、日々さまざまな悩みに寄り添う。

cocomomoをフォローする
「しんきゃり」はメールマガジンを発行しています。内容は当サイトの更新情報、心理学やカウンセリングに関する新刊書籍・イベント・資格講座のキャンペーン情報などです。発行頻度は月に一回です。ご興味があれば次のリンクから登録をお願いします。
心理学の種類
しんきゃり
タイトルとURLをコピーしました