「心理学の魅力」という記事で、心理学は基礎心理学と応用心理学に分けられるということを書きました。本記事は「心理学を学んで仕事や資格に活かしたい」という人に向けて、基礎心理学8種類の概要と関連する資格や職業30種類についてまとめています。基礎心理学は実験や調査などの統計・数理的な処理が基本的な研究内容であるため、実務に活かすというイメージはわきづらいかもしれません。しかし以下に示すように、実に多くの仕事や資格と関わっています。
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認知心理学
認知心理学は、知覚、感覚などを研究対象とします。
人間は、見る、聴く、嗅ぐなどの知覚なしでは行動することはできません。基礎心理学の中でも特に重要な位置を占めています。
認知心理学を直接用いた職業としては、研究職が主になります。他の研究職同様、絶対数(求人)自体は非常に少ないです。その理論を臨床的に応用したものとして、認知療法があります。「ものごとのとらえ方」=「その人の認知のあり方」を望ましいものにすることによって、不具合を解消しようとするものです。
また、心理検査、とりわけ認知症や脳障害の判別には、認知心理学を応用した検査が用いられます。
【関係する資格】
認知行動療法士
【関係する仕事】
公立研究所などの研究職
セラピスト
※「認知心理学とは何か」について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください↓
発達心理学
人間が生まれてから死ぬまでの心身の発達過程を理論化したものです。一昔前は、愛着理論という、乳児期の母子密着が子供のその後の性格や行動に大きく影響するという考え方が主流でしたが、最近では、母以外の友人・兄弟などの社会と関わりながら発達していくソーシャルネットワークという考え方も広まってきています。
【関係する資格】
臨床心理士
【関係する仕事】
家庭児童相談室の相談員
障害者職業カウンセラー
など
発達心理学について詳しい記事はこちら↓
学習心理学
学習心理学は、理解や記憶のしくみを研究します。学習から経過した時間と記憶した量の関係の研究である、エビングハウスの忘却曲線などは有名ですね。
学習心理学のエッセンスは、教育心理学に多く応用されています。これも基礎心理学ですので、認知心理学と同様、直接活用される仕事としては、研究職が主になります。
【関連する資格】
臨床心理士
公認心理師
【関連する仕事】
リハビリテーションセンターの心理職など
性格心理学
性格心理学は、個人の気質や行動の傾向の法則性を明らかにしようとします。外向性-内向性 の分類を唱えたユングは日本でも最も有名な心理学者の1人でしょう。
最近の研究では、性格5因子論が有力です。性格は次の5つで表現できるというものです。
神経症傾向、 外向性、開放性、協調性、誠実性。
性格心理学は、応用心理学である臨床心理学や教育心理学、犯罪心理学とも大きな関連があります。
【関連する資格】
臨床心理士
【関連する仕事】
法務教官
精神科医
社会心理学
人間の社会の中での行動やこころの動きを研究するのが社会心理学です。
心理学者で初めてノーベル賞を受賞したカーネマンの研究を社会心理学と分類する人もいます。この受賞により注目を浴びた、行動経済学という分野とも深いつながりがあります。行動経済学とは経済学の理論だけでは説明できない人の行動を、主に社会心理学のエッセンスで説明する学問です。
統計学を用いた実験的手法が主になります。産業心理学等でも幅広く応用されています。
マーケティングや社会調査でも活用されています。
【関連する資格】
社会調査士
【関連する仕事】
経営コンサルタント
企業の商品開発・マーケティング
企業の広報
など
社会心理学の詳しい内容や仕事についてもっと知りたい方は当サイトのこちらの記事もご覧ください。
計量心理学
計量心理学は、こころの動きや行動を統計処理を用いて、客観的に観測可能な方法で計量化して測定する方法についての研究をします。よく似たものに数理心理学がありますが、これはこころの動きを定式化したものです。広い意味では、計量心理学を数理心理学に含んで考えることもあります。
【関連する資格】
【関連する仕事】
研究職
大学教員
など
神経心理学
神経心理学では、言語などの精神機能との関係を研究します。リハビリテーション医療と密接なつながりがあります。心理の仕事としては、心理検査が主となります。研究領域でも活躍している人がいます。
【関連する資格】
医師
言語聴覚士
臨床心理士
【関連する仕事】
リハビリテーション病院の心理職
製薬会社の研究員
など
理論心理学
理論心理学は、心理学の理論そのものを扱う分野です。「心理学という学問を学問する」わけです。心理学史や心理学の諸理論の比較・統合を研究します。
【関連する資格】
心理学検定
【関連する仕事】
大学教員など
研究員だけではない基礎心理学の職業
基礎心理学を究める人の職業は研究員ばかりではありません。データ・サイエンティストやマーケターなど一般的に人気の高い職種もあります。専門性の高いカウンセラーを目指す人もいるようです。
大学でしっかり心理学を学ぶのであれば、ここで取り上げる基礎心理学のうちのいくつかは1年次や2年次などの早い段階で履修することになるでしょう。将来なりたい姿が明確になっていると、勉強に身が入りやすくなります。これから志望校を決める高校生も、心理学科の大学生も、社会人入試を検討している社会人も、卒業後のキャリアを考えて選択することをおすすめします。