ニュースや新聞などで、毎日さまざまな犯罪についての報道がなされています。また、ドラマや映画の中で、犯罪心理学を扱うものを見たことがある人も多いかもしれません。罪を犯す人々について、なぜその行動に至ったかを明らかにするために、たくさんの研究がされてきました。この記事では、犯罪心理学がこれまでどのように社会の中で使われてきたかや、犯罪心理学の知識を活かせる職業などについてご紹介します。
犯罪心理学とは?
心理学の中の一つの分野で、人が行ってしまう犯罪行動について心理学を用いて科学的に理解し、その知識を犯罪抑止に役立てることを目的とした、応用科学です。主に、捜査や罪を犯した人の更生、防犯などさまざまな場面で活用されています。
例えば、「人はなぜ犯罪を行うのか」、「罪を犯す人と、そうでない人はどこに違いがあるのか」、「犯罪者が立ち直る方法はあるか」、「どうしたら犯罪を予防できるのか」このような問いに対して、少しでも正しい答えを見つけるために、犯罪心理学は発展してきました。
犯罪心理学の重要な役割は、科学的に客観的な事実やデータに基づいて犯罪行動を分析し、二度と同じような事件が起きないように予防策を考え、犯人の治療を行うことです。それが、犯罪によって傷ついた人のためにできることでもあります。
変化する犯罪心理学
初期の研究では、「生まれながらの犯罪者がいる」という考えから始まりました。顔の特徴や、体の形などに特徴がある人を、犯罪者であると考えたのです。しかし、この考え方はあまりに偏りがあり、後に多くの研究者たちに否定されています。
このように、罪を犯す人が特別な存在であるという認識のもとにさまざまな研究が行われてきたことが、現在にも大きな影響を与えています。過去には、知的障害者を犯罪者としたり、犯罪が遺伝するとしたり…犯罪者となってしまう要素がどこにあるか?という研究がたくさんなされてきました。そのほとんどに、科学的エビデンス(根拠)がないことが後の研究によって示されています。
それが最近では、もともとその人が持っている要素だけではなく、育った環境や時代、状況が重要な役割を果たすという考え方が主流になってきました。さまざまなデータを集め、客観的に分析して、科学的に犯罪を扱うことが現代の主流です。
犯罪心理学の専門家の仕事
犯罪心理学は、社会と人間の関係を考える「社会心理学」という学問が土台となり、さまざまな分野で活躍の機会があります。大学卒業後の進路としては、公的機関で専門職の公務員として働いたり、一般企業に就職したりすることも多いです。
科学捜査研究所
全国の警察にて、科学捜査の研究や鑑定を行います。ポリグラフやプロファイリングなど、警察官が持ち合わせていない専門知識を犯罪捜査のために提供します。
科学警察研究所
国の機関で、犯罪科学技術の研究や、証拠物の鑑定・検査、科学捜査研究所の専門職員研修などを行います。
家庭裁判所調査官
家庭裁判所が扱う家庭問題や非行についての調査を行い、審判に使う資料を作ります。離婚や親権問題、少年犯罪なども扱います。
家庭裁判所調査官の仕事内容などの詳細はこちらの記事をご覧ください。
法務省専門職員(矯正心理専門職、保護観察官、法務教官)
刑務所、少年鑑別所、拘置所などで働く専門職です。心理検査を行ったり、罪を犯した人が社会復帰するための支援を行ったりします。矯正心理専門職の仕事に関する記事はこちら。
犯罪心理学は犯罪行動を抑えるための「データの科学」
犯罪心理学は、ここ30年ほどの間に、さまざまな変化を遂げてきた学問です。社会の中でたくさん活用され、研究も盛んに行われています。今では、犯罪を犯す人を特別な存在として扱うのではなく、データを集め、客観的に分析し、犯罪に何が影響を与えているのかを考える、科学的な学問となりました。「人に興味がある」という人は、きっと興味深く学ぶことができるはずです。
参考文献