国家資格キャリアコンサルタント(以下、「国家資格」と書きます)の上位資格としてキャリアコンサルティング技能検定(以下、「技能士」)があることをご存じの方は多いでしょう。では2級・1級技能士の合格者がわざわざ国家資格保有者として登録する必要はあるのでしょうか。そもそも名称独占資格であるキャリアコンサルタントを取得する必要性に疑問を持つ方もいるかもしれません。国家資格に登録するメリット4つとデメリットをお伝えします。
クライエントや企業から信頼を得られやすい
最初に挙げるメリットは、直接の顧客であるクライエントや就職活動先の企業などから信頼を得られやすくなることです。
理由の1つは「キャリアコンサルタント」を名乗れることです。この名称を使えるのは国家資格を取得し登録した人だけです。技能士や民間のキャリアカウンセラー資格だけを持っていても名乗れません。第一印象で最も分かりやすい呼び名ではないでしょうか。もちろん名刺にも記載できます。
もう1つの理由は、登録していること自体が専門家として研さんを積んでいる証明になることです。どういうことかというと、国家資格の登録には 5年ごとの更新が必要となり、そのためには講習に参加しなければなりません(ただし1級技能士は免除されます)。勉強を続けなければキャリアコンサルタントを名乗れないのです。
また、後述する公的なサイトへの登録も信頼性を生む要因になるでしょう。
上記の仕組みを知っているクライエントや企業にはもちろん、知らない場合も説明すればアピールポイントになります。信頼を獲得すれば仕事がしやすくなるでしょう。
国家資格と技能士の違いがいまいちよくわからないという人は当サイトのこちらの記事をご覧ください→キャリアコンサルタントに関わる3種類の国家資格
助成金の申請で必要とされる
国家資格への登録には活躍の場を広げるメリットもあります。
雇用改善やキャリア開発に取り組んでいる企業に対して国から助成金があります。これら「雇用関係助成金」の一部は、国家資格に登録しているキャリアコンサルタントを活用していることを要件としています。例えば次のような制度です。
- トライアル雇用助成金
- 教育訓練・職業能力評価制度(人材開発支援助成金)
- セルフ・キャリアドック制度(同)
- 企業内人材育成推進助成金
上記は受給の要件に「対象労働者にジョブ・カードが発行されていること」という条件が課せられています。
「ジョブ・カード」というのは一見すると履歴書・職務経歴書とよく似た様式ですが、キャリア形成やスキル証明に活用するために作る書類です。厚生労働省がフォーマットを提供しています。
スキル証明とは、対象の労働者がこの助成金を受給するのにふさわしいことの証明です。国家資格キャリアコンサルタントだけに認められた業務となっています(または講習を受けた「ジョブ・カード作成アドバイザー」)。
ジョブ・カードを発行できるキャリアコンサルタントには、助成金を申請する企業から需要があります。そのため就職先や外部の委託先として活躍する可能性が広がります。
※助成金制度は毎年変わります。上記には過去の制度も含まれます。
国の検索サイトに登録できる
キャリアコンサルタントは国が運営する「キャリコンサーチ」に登録できます。登録者と企業や個人などの需要者をマッチングするシステムです。
登録したキャリアコンサルタントは対応エリアや対応可能な業務、経歴や得意分野などを公開し、需要者はそれらの情報から検索します。上手にアピールできれば、このサイトを通じて仕事を獲得できるかもしれません。
キャリコンサーチの登録者数は2020年10月現在3,775人です。多いと思われるかもしれませんが、国家資格に登録済みの約5万4千人に対してわずか7%です。用意されたインフラを積極的に活用する姿勢がチャンスを広げるかもしれません。
キャリコンサーチ
https://careerconsultant.mhlw.go.jp/n/career_release.html
同業者のネットワークに参加できる
ACCNをご存じでしょうか?「オールキャリアコンサルタントネットワーク」の略称で、いわばキャリアコンサルタントの同業者団体です。2018年10月1日に一般財団法人として設立されました。次のような活動を行っています。
- 研究活動
- 学習支援サービス
- イベントや公演動画の配信
- 書籍の割引販売
年会費は4,000円と割安です。その上、キャリアコンサルタント業務専用の賠償責任保険も付きます。任意で所得補償保険にも加入できます。自己研さんや情報収集、同業者との交流、人脈づくりに役立つ団体です。
一般財団法人ACCN
https://www.allccn.org/
登録のデメリットは?
デメリットを挙げるとすれば、登録と更新にお金がかかることです。新規登録の際には登録免許税9,000円と登録手数料8,000 円の合計1万7,000円(消費税非課税)が発生します。5年後にも更新手数料8,000 円が必要です。更新のために必要な講習代は10万円以上かかるでしょう。
期間内に更新しなかった場合、資格を失効してしまいます。登録を継続したいのであれば、講習は計画的に受けなければなりません。失効後も条件をクリアすれば再登録できます。
登録することで活躍の場が広がる
国家資格キャリアコンサルタントとして登録することで、次のようなメリットがあります。まず、「キャリアコンサルタント」を名乗れることで、企業や相談者から信頼を得やすくなることです。次に、助成金の申請に関する業務に携わることができるようになります。さらに国が運営する「キャリコンサーチ」に登録すれば、仕事を獲得するチャンスが増えるでしょう。同業者団体の「ACCN」に加入して交流や継続学習もしやすくなります。
「資格を取得して終わり」では、更新手数料を支払い続けるだけの状態になってしまいます。登録のメリットを活かし、活躍の場を広げていくことをおすすめします。