児童心理司の仕事がつなぐ子どもの未来~心理学の知見と豊かな感性を大切に~

近年頻発している悲しい事件をきっかけに、児童相談所の業務やあり方について、世間の関心が高まるようになりました。児童相談所において、困難を抱えた子どもたちの未来を守るために、児童福祉司と並んで重要な役割を担っているのが、児童心理司です。以下、具体的な仕事内容について見ていきましょう。

つながる大人の手と子どもの手
あめんぼさんによる写真ACからの写真
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児童心理司とは?主な業務内容

児童心理司は、児童福祉法に基づき、児童相談所に置かれている心理分野の専門職員です。主な業務は、心理学の専門的な知識を元に、子どもや保護者らの心理的な状況を把握・判断することです。都道府県などの自治体に所属し、かつては「心理判定員」と呼ばれていました。

児童心理司の業務には、知的障害の子どもたちに、必要な行政サービスが受けられるように発行される療育手帳についての判定業務があります。自治体により判断の基準はさまざまですが、複数の等級があり、一人ひとりの能力に合った手帳が交付されるよう、必要な知能検査や発達検査、保護者からの聞き取りなどを行います。

虐待や育児放棄などで、一時的に保護された子ども達に、必要な面談やカウンセリングなどの心理療法を行うことも大切な業務です。心が深く傷ついた子ども達は、なかなか大人に本音を語ろうとはしません。家庭が何らかの問題を抱えている可能性もありますので、保護者や他の家族への対応も重要です。的確な状態観察とともに、丁寧な関わりが求められます。

この業務は特に、児童福祉司とタッグを組んで行うことになります。場合によっては、役所や学校、更生施設、自立支援施設などとの連携も必要になることもあります。案件が複雑であればあるほど、チームワークの良さが鍵になります。

ある児童心理司の一日

児童心理司のある日のスケジュールを見てみましょう。

8時半始業、課のミーティングに参加し、心理検査や昨夜のうちに一時保護された児童についての申し送りなどを確認します。その後、午前中に来所する子どものために、検査の準備をします。

9時半には、療育手帳の交付申請をした子どもが母親と一緒に来所しました。待合室であいさつをし、子どもと一緒に面接室に行きます。子どもはやや緊張していましたが、最後までよくがんばって受けてくれました。終わったら母親を呼び、発達検査を兼ねた聞き取りを行います。

その後、採点結果や交付までの流れを説明して親子を見送ったら、自分の机に戻り、所見作成をします。点数を付けるだけではなく、受検していたときの態度やこちらの声掛けに対する反応といった行動観察も、大切な記録の一つです。

お昼の時間でも電話はかかってきます。今日は電話を受ける当番の日であるため、同僚とはずらして昼休みをとります。

卓球場のようす
acworksさんによる写真ACからの写真

午後は、育児放棄のために保護された子どもと会う予定が入っていました。13時半に迎えに行き、プレイルームで一緒に卓球をします。かなり攻撃的で、子どもだからと手加減しているとこちらが振り回されそうです。つらいことがたくさんあったのかもしれないですが、まだ細かい話を聞くのには早いかもしれません。今はとにかく、遊びを通して信頼関係を築いていくことを目標にします。

15時からは、現在担当している子どもの事案について、児童福祉司と話し合いをします。各機関との調整といったケースワーク的な仕事は基本的には児童福祉司がしますが、問題の解決にあたっては、児童心理司の見解も大切な要素になります。

16時からは、保護者との面談です。子どものことで来所したとしても、親自身が何らかの悩みをもっていることは少なくありません。日々の育児をねぎらいながら、丁寧に対応します。その後、面談記録や報告をまとめ、確認するための部署に送って、17時半頃終了です。突発的な事案が発生したときには、残業になることもあります。

児童心理司になるには?高度な専門性が求められる任用資格

児童心理司は、試験を受けたり研修を経たりして得られる資格ではありません。地方公務員試験に合格し、児童福祉法に定められた、任用されるための要件を満たしていることが必要です。精神保健に精通している医師であるか、大学で心理学を専修していることがその要件で、児童相談所に配属されてはじめて、児童心理司となります。

したがって、児童心理司になるためには、まずは心理系の学部を目指すことになります。入学後は、公務員試験のための勉強も始めなければなりません。

なお、臨床心理士資格が重要視されることも多いので、心理系ではない学部を卒業していても、大学院に進学して臨床心理士資格を取得する方法もあります。臨床発達心理士資格所持者でも任用されることがあるようです。いずれにせよ、心理学に関した高度な専門性が求められているといえるでしょう。

児童心理司は子どもを明るい未来につなぐ

児童相談所には、日々さまざまな相談が持ち込まれます。対象児童だけを見ればよいわけではないので、心身の負担も相当あるでしょう。しかし、カウンセリングや検査などのサポートによって問題が解決に向かおうとしているときには、大げさではなく、誰かの命が救えているのかもしれません。それは何事にも代えがたい喜びだと思います。心理学的な知見はもちろんのこと、子どもたちが笑顔であたたかな場所へ帰っていけるように見守る、豊かな感性をも学生のうちに養い育んでおきましょう。

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この記事を書いた人
cocomomo

臨床心理士、公認心理師。上場企業の人事部、児童相談所、私設相談室カウンセラーを経て、現在は主にクリニックにて心理検査やカウンセリングを担当。恋愛に関することから親子関係まで、日々さまざまな悩みに寄り添う。

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