養護教諭になるには?保健室の先生のリアルをご紹介します!

養護教諭とは、いわゆる「学校の保健室の先生」のことです。担任や教科を教える教諭とは違う立場から、全校生徒の心と体の健康を守るために働くことができる、やりがいの大きな仕事といえます。外から見えないところでどんな仕事をしているかは、一緒に働いている教員ですら見えない部分が多いのも事実です。筆者が養護教諭として勤務してきた経験も織り交ぜながら、この記事の中ではできるだけリアルな「保健室の先生」の様子をご紹介したいと思います。

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養護教諭はどんなお仕事?

養護教諭の仕事の範囲は、大きく分けると、健康診断、健康相談、保健指導、救急処置その他の保健に関することと定められています。主な内容を以下にご紹介します。

救急処置:保健室は何でも屋さん

保健室には、内科、外科、精神科問わず相談が持ちかけられます。たった10分間の休み時間に、突き指、腹痛、切り傷、友人関係の相談、発熱や嘔吐などが次々と来ることもあり、それらに優先順位をつけて対応します。

具体的には、同じ腹痛でも、様子見で良いものから緊急搬送が必要なものまで、さまざまなケースがあるため、まず子どもがやってきたらアセスメント(見立て)を行い緊急度の判断をします。アセスメントスキルは、大学などの養成機関で看護学や小児医学も学びながら、実習なども経験して身につけます。養護教諭は医療行為を行うことはできませんが、医療につなぐか、学校での救急処置を行うかを見極める力がとても重要になります。

健康診断:学校全体の動きを把握してコーディネート

学校の健康診断では、子どもたちの健康状態の異常を早期発見、早期治療するためのスクリーニングを行います。子どもたちや保護者の協力も仰ぎ、学校医や教育委員会とも連携して、教職員の動き含め全体をコーディネートする能力が求められます。また、健康に関する各種調査、問診票のチェック、対応が必要なケースのピックアップや情報処理といった事務作業も多く発生します。個人情報も多く扱うので、適切に管理することが必要です。

健康相談

児童・生徒の心身の健康課題に関する相談を受け、対応を行います。内容により、教職員や保護者、医療機関などと連携して対応を行う必要があります。また、共感を示しながら必要なことを聞き取ることができるカウンセリングスキル、アセスメントスキルも重要です。

学校環境衛生

学校内の環境が、子どもたちが健康的に学習する場として適しているかの管理を行います。学校保健安全法という法律に沿って、年間の検査とその結果を管理していきます。この部分は、養護教諭が実務を行うかどうか学校により大きく異なりますが、正常範囲の数値や検査方法などを把握しておく必要があります。

保健室経営

保健室の入口

保健室経営計画を作成し、学校全体の健康課題にアプローチする取り組みを計画、実施して行きます。また、学校全体で使っていく保健室備品や薬品関係を適切に管理することも重要な仕事です。

養護教諭になるには

養護教諭の1種教員免許状は、大学の教育学部養護教諭養成課程や、一部の大学の医学部保健学科などで専門科目を履修することで取得できます。2種免許状は、短大の養護保健学科や養護教諭養成機関に進み、所定の科目を履修すると取得できます。その他に、保健師や看護師免許を取得している人は、養護教諭養成機関や大学などに編入して所定科目を履修することで、養護教諭1種免許状を取得することができます。

その上で、公立学校で公務員として働きたい場合は、自治体の実施する教員採用試験を受験し、私立学校で働きたい場合は、それぞれの学校の採用試験を受けることで、合格すると養護教諭としての勤務がスタートできます。

公立学校の採用試験では、養護教諭というカテゴリで試験を受けるため、採用後は幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校などの中から配置された場所で勤務することになります。希望を出すことはできますが、実際に所属が決まるまでどこに配置されるかは実際にはわかりません。一般的に、公立学校は一定の年数で異動があり、試験を受けていくことで管理職になることも可能です。

養護教諭はこんな人が活躍できます

白衣の女性

ここまでに書いたとおり、養護教諭の仕事の内容は幅広く、専門性の高い職業です。加えて、臨機応変な対応が求められるため、マルチタスク的な能力が必要な場面もあります。下記のような力を身に着けていくと、養護教諭として能力を発揮しながら活躍できるでしょう。

  • 子どもから大人まで、幅広い年代の人とのコミュニケーションが取れる
  • 想像力を働かせて物事を組み立てていける
  • 突然発生することにも落ち着いて冷静に対応できる
  • 幅広い分野のことを楽しんで学ぶことができる
  • 最新の感染症情報などにアンテナを立てて情報収集できる
  • いろんな立場の人を巻き込んでコーディネートできる
  • 地味な作業を効率よく行う工夫ができる
  • 整理整頓をしながら保健室や学校内を衛生的に管理することができる
  • なんでも自分で抱え込まず、人を頼ることができる

養護教諭は子どもたちの心身の健康の専門家

養護教諭は、ほとんどの学校では一人配置です。子どもたちの人数が多い学校や、特別支援学校、高等学校等は2名配置のこともありますが、とにかく毎日たくさんの人とのやり取りをしながら仕事をしていきます。人との出会いを楽しむことができる人が養護教諭として勤務していると、保健室も明るい雰囲気になり、悩みや困りごとを相談したいと思った人の心にふと浮かぶような存在になれるのではないかと思います。

参考資料

学校保健安全法
学校保健会ホームページ
学校保健ポータルサイト

この記事を書いた人
近江亜佳里

公認心理師。中学校・特別支援学校で養護教諭(いわゆる保健室の先生)として8年間働く。子どもを取り巻く多様な問題に直面し、誰もが未来を夢見て自分で人生を歩んでいける社会づくりを行うため転職。現在は親子支援のNPO法人に勤めている。

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