コロナ禍におけるカウンセリング事情【公認心理師・臨床心理士お仕事エッセイ~cocomomo~(9)】

外出時にマスクが手放せなくなってから長い期間になりますが、感染症の拡大はいまだに収束の気配を見いだせない状況です。この間、私たち心理職をとりまく環境も大きな変化を余儀なくされました。

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表情が見えないことや道具を使えないことについて

カウンセリングや心理検査では、心理職は相手の語る言葉や検査成績と同様に、その間の表情や態度にも敏感になります。ところが、マスクは顔の下半分を覆い隠してしまうので、表情から得られる情報は限られたものになってしまいました。しかし、最近では目や額の動きからでも「イライラしている」、「嬉しそう」、「いや、口元では笑ってないな」、などといったことが少しずつ感じられるようになってきました。また、箱庭療法では、砂やら繊細な道具など消毒に適さないものが多いのでしばらく中止していたのですが、その後人数を絞り2週間あけて実施することにしました。その他の人には、筆記用具なら消毒できるので、描画療法などに移行しています。

オンラインカウンセリングについて

数か月前より、オンラインによるカウンセリングも開始しました。あくまでも個人の感想ですが、目下、意外にもうまくいっています。もちろん会話にラグがあったり、すべてが対面と同様にいくわけではありません。最初はお互い、画面越しに少々居心地の悪さを感じることがありました。しかし、会話が始まってしまうと思いのほか気にならなくなりました。ヘッドセットを着けているせいか、相手の言葉にとても集中できるようになった気もします。もっとも、それが良いか悪いのかは別の話です。それも含めてカウンセリングの質やこちらの感じ方にどんな影響を与えていくのか、今後も考えていかなくてはならないと思っています。

学会や研修について

学びの場もすっかりオンライン化しました。学会などはあちこちで開催されるため、以前は交通費がかかったり日程が合わずあきらめることもあったので、助かっている面もあります。しかし、そのために発表内容が制限されたものになってしまっているのが残念です。心理臨床の肝であるケース(事例)発表がほとんどできないのです。ケース検討に際しては、配布されたレジュメは回収されるなど個人情報に関して厳格な取り扱いがなされます。しかし、オンラインでは画面の向こうで録音や録画をしていてもわかりませんし、悪意のあるなしに関わらず第三者が視聴している可能性もゼロではありません。そのために、最近では具体的な事例について話し合うといった機会がもちづらくなっています。学会や研修会でも今後についてはいろいろ考えているようですが、しばらくは現在可能な方法の範囲で学んでいくことになると思います。

そもそも、心理職のような対人援助職は「人と対峙してなんぼ」の職業です。表情を見て、密室(安全な空間)で、心を通わせていくことで問題を解決したり、新しい道を探ったり、気持ちや症状が楽になる方法を考えたりします。物理的にそれが難しくなったからといって、すべてがスムーズにオンラインに移行できるわけではありません。それでも私たちはどうにかこうにか、この未曾有の事態に適応しようと日々工夫を重ねていくのだと思います。

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この記事を書いた人
cocomomo

臨床心理士、公認心理師。上場企業の人事部、児童相談所、私設相談室カウンセラーを経て、現在は主にクリニックにて心理検査やカウンセリングを担当。恋愛に関することから親子関係まで、日々さまざまな悩みに寄り添う。

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