知能検査は何のため?【公認心理師・臨床心理士お仕事エッセイ~cocomomo~(10)】

心理職の重要な仕事のひとつに、各種の心理検査があります。それだけで心理的な問題や症状の原因となっていることすべてが明らかにできるわけではありませんが、目に見えない心の動きや知的能力を知るためのヒントになることは確かです。今回は、いわゆる「IQ」(知能指数)のわかる検査について思ったことをお伝えしたいと思います。

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知能検査を実施する理由

知能検査を実施する主な目的は、主に二つあります。児童相談所や教育相談所では、知的発達に遅れのある人に発行される療育手帳の申請を受け付けたときや、就学前に支援級を検討するさいに「知的発達能力に遅れがあるかどうか」を知るために行われます。もう一つは、「その人の得意、不得意を知って支援や理解に活かすため」です。私は現在クリニックにて、ほとんど後者のために行っています。

「知能検査」と言われてびっくりされることも

患者や保護者に「次回知能検査をします」と伝えると、「何か問題があるのか」と不安そうな表情をされることがあります。ただでさえしんどい思いをして通院しているのですから、そのような気持ちになるのもわかります(そういえば「バカにしてるのか」と怒られたこともありました)。

各心理職もそれぞれの場所で伝え方を工夫していると思いますが、私は「自分が得意なことはなにかな、どうがんばったらもっと楽な生き方ができるかな、ということを一緒に考えてもらうためのテストです」とか、「頭の体操だと思ってください、何も準備はいりません」などと伝えるようにしています。安心してもらえるようで、特段の理由なしのキャンセルもほとんどありません。

相手も緊張している

検査の内容を熟知し正確に実施することは、検査者として最低限の仕事です。慣れていないものや版が新しくなって間もないころには、検査者もとても緊張すると思います。ですが、こちらの緊張は相手に伝わってしまうものですので、その点においても気をつけねばなりません。また、検査なのでマニュアルに沿って行わなければなりませんが、それだけでは不十分です。検査からわかることは数値以外にも膨大にあります。私は、検査用紙の余白に、答え方や態度など気づいたことをどんどんメモしていきます。自分の時間を割き、それなりのストレスを感じながら受検してくれるのですから、「絶対に役立つフィードバックをしたい」と思っています。

学部や大学院でも心理検査の授業はありますし、それなりに練習などもできると思います。しかし、やはり場数を踏まないと実施に手間取ることもありますし、臨床現場に出て実際に「困っている人」のケースを担当して初めてわかることも多いです。そして、たとえ場慣れしてきたとしても、「知能検査だけでその人のすべての能力をはかることができるわけではない」ということを忘れずにいるべきでしょう。被検者にかかる負担を考え、人として謙虚な態度で接することは検査に精通することよりも大切だと思います。

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この記事を書いた人
cocomomo

臨床心理士、公認心理師。上場企業の人事部、児童相談所、私設相談室カウンセラーを経て、現在は主にクリニックにて心理検査やカウンセリングを担当。恋愛に関することから親子関係まで、日々さまざまな悩みに寄り添う。

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