しんきゃり公式LINEはじめました!記事の更新など最新コンテンツの情報をお届けします。「こんな記事が読みたい」などのリクエストも大歓迎!友だち追加する

産業・組織心理学とは?モチベーション・人間関係・キャリアから学ぶ「働く心理」

オフィスで働く個人と話し合うチームのイラスト

産業・組織心理学は、働く人の心理や行動を、仕事、チーム、組織との関係から研究する心理学です。公認心理師を目指す人が大学で学ぶ必要科目の一つでもあります。「なぜ仕事への意欲が変わるのか」「職場によって働きやすさが違うのはなぜか」「人はどのようにキャリアを築くのか」といった問いを扱います。

この記事では、産業心理学と組織心理学という二つの視点を一つの記事で扱います。個人・チーム・組織の三つのレベルから、仕事との適合、動機づけ、人間関係、キャリア、職場への心理支援まで見ていきます。大学でこの科目を学ぶ人も、働く人と職場の両方に目を向ける理由がつかめるでしょう。

広告
  1. 産業・組織心理学とは
  2. 産業心理学と組織心理学は何が違う?
    1. 人と仕事を考える視点
    2. チームと組織を考える視点
    3. なぜ一つの分野として学ぶのか
  3. 産業・組織心理学では何を研究する?
    1. 個人――働く人の気持ちと行動
    2. チーム――人間関係と協働
    3. 組織――仕組みと職場環境
  4. 働く心理を理解する四つの研究テーマ
    1. モチベーション――なぜ人は働こうと思うのか
    2. リーダーシップ――チームにどう関わるのか
    3. 職務満足――何に満足して働くのか
    4. キャリア――働きながら何を選ぶのか
  5. 人と仕事の関係をどう調べる?
    1. 採用・選抜――何を根拠に人を選ぶか
    2. 配置と人材育成――仕事を始めてからも続く問い
  6. チームと組織の行動をどう調べる?
    1. リーダーシップと情報共有
    2. 組織文化と組織の変化
  7. 産業・組織心理学は仕事でどう使われる?
    1. 職場の問題への心理支援――本人と環境の双方を見る
  8. 【具体例】「やる気がない社員」をどう考える?
  9. 公認心理師を目指す人にとって重要?
  10. 産業・組織心理学に関わる資格と仕事
    1. 産業カウンセラー
    2. キャリアコンサルタント
    3. 公認心理師
  11. 社会心理学・臨床心理学との違い
  12. 産業・組織心理学を学ぶ面白さ
  13. 産業・組織心理学についてよくある質問
    1. Q1.産業・組織心理学は、会社員のメンタルヘルスだけを扱いますか?
    2. Q2.産業心理学と組織心理学を別々に学ぶ必要がありますか?
    3. Q3.公認心理師試験にも関係しますか?
    4. Q4.会社員が学ぶ意味はありますか?
  14. まとめ
  15. 参考文献・参考資料

産業・組織心理学とは

産業・組織心理学とは、働く場面における人の心理や行動を科学的に調べ、その知見を仕事や職場の課題の理解に生かす分野です。対象は会社員に限りません。多様な職種や組織で働く人を考える手がかりになります。

米国の産業・組織心理学会(SIOP)の分野紹介でも、採用・育成、リーダーシップ、組織開発、働く人の健康などを研究と実践の対象として挙げています。日本の公認心理師養成課程の科目資料(厚生労働省)では、「産業・組織心理学」に含まれる事項として、キャリア形成を含む職場の問題への心理支援と、組織における人の行動が示されています。この二つが、科目として学ぶ範囲を考える軸になります。

例えば、同じ社員について「意欲が落ちた」と感じたとき、本人の気持ちだけを聞くのでは十分ではありません。仕事の内容、チームの関わり方、評価の仕組みなども検討します。人と職場の双方に視線を向けるところに、この分野の特徴があります。

産業心理学と組織心理学は何が違う?

名称だけを見ると、二つをきれいに分けられそうです。しかし、研究対象は重なります。ここでは厳密な境界ではなく、問いの立て方の違いとして整理します。名称の使い方は文献や授業によって異なるため、この表を唯一の定義として扱わないでください。

視点問いの例本記事で詳しく扱う内容
産業心理学寄り人と仕事をどう結びつけ、働く条件をどう考えるか採用・選抜、適性、配置、仕事の設計、キャリア
組織心理学寄りチームや組織の中で人はどう行動するかリーダーシップ、協働、組織文化、組織の変化
両方にまたがる人と職場の関係をどう理解するか動機づけ、職務満足、ストレス、職場への適応

人と仕事を考える視点

同じ人が仕事を変えると、力を発揮しやすさが変わることがあります。「本人には何ができるか」だけではなく、仕事にはどんな作業や役割があるか、どんな環境で行うかを調べます。採用や配置の場面でも、何を目的に評価するかが先に問われます。心理検査の数字を一つ見れば、向いている仕事が自動的に決まるわけではありません。

チームと組織を考える視点

同じ仕事でも、上司との相談のしやすさやチームの情報共有によって経験は変わります。組織の方針、人事評価、職場に根づいた価値観が、人の行動とどう関わるかも研究します。「組織」は人から独立して心を持つ存在ではなく、人が関わり合い、仕事を進める仕組みと場です。

なぜ一つの分野として学ぶのか

例えば採用は「人と仕事の適合」を問う一方、誰を採用するかは組織の方針やチームの仕事にも関わります。キャリア上の悩みには、本人の希望、上司との関係、職場の制度が重なるでしょう。公認心理師の大学科目名が「産業・組織心理学」であり、厚生労働省の科目表に職場の問題への支援と組織における人の行動の両方が示されていることも、この二つの視点をまとめて学ぶ理由になります。

産業・組織心理学では何を研究する?

扱う範囲を個人・チーム・組織の三つのレベルで見てみましょう。これは学習のための整理であり、研究テーマがきれいに三分割されるという意味ではありません。一つの出来事が複数のレベルにまたがります。

個人――働く人の気持ちと行動

仕事に取り組む動機づけ、仕事内容への満足、職業選択、キャリア形成、職業上のストレスなどが対象です。「努力したい」と思える条件は人によっても状況によっても異なります。仕事を通じて何を得たいか、どんな支援が必要かも問いになります。

チーム――人間関係と協働

上司と部下の関係、リーダーシップ、情報共有、チームワークなどを調べます。仕事は個人で完結しないことが多いため、同僚との協力や相談のしやすさが働き方にどう関わるかも重要です。

組織――仕組みと職場環境

組織文化、組織変革、人事評価の仕組みなどを扱います。採用や配置は個人と組織を結ぶテーマです。「組織文化」とは、その職場で共有される価値観や行動のあり方です。チームの雰囲気と、組織全体の制度や方針は関わり合っています。

この三つの視点を図にまとめました。境界が重なっているのは、現実の職場では個人・チーム・組織が切り離せないためです。ここまでの「産業心理学寄り」「組織心理学寄り」という整理とは別に、問題を観察する高さを変える図です。

 個人・チーム・組織という三つの視点と研究テーマ

例えば「仕事の負担が大きい」という悩みも、個人の感じ方、チーム内の役割分担、組織の人員配置という複数の面から考えられます。

働く心理を理解する四つの研究テーマ

分野の入口になる四つの問いを紹介します。ここでは個々の理論の詳細ではなく、何を研究する分野なのかに焦点を当てます。以下で扱う仕事の設計やチームの仕組みとも関連します。

モチベーション――なぜ人は働こうと思うのか

動機づけとは、行動を始め、続け、方向づけることに関わる心理的な働きです。報酬だけでなく、仕事の意味、目標の立て方、自分で工夫できる余地なども研究対象になります。

例えば成果が見えにくい業務では、「頑張っても何も変わらない」と感じるかもしれません。業務の目的を共有したり、達成までの経過を確かめたりすることが、どんな状況で有効かを検討します。ただし、個々人の意欲低下の原因を、理論名だけで診断することはできません。

リーダーシップ――チームにどう関わるのか

リーダーシップは、集団の目標達成や活動に影響を及ぼす働きです。リーダーの性格だけでなく、目標の伝え方、メンバーへの支援、状況に応じた関わり方などが研究されます。

「厳しく指示すれば成果が上がる」といった一つの型に還元できません。新しい業務に取り組むチームと、経験者が自主的に進めるチームでは、必要な関わりが違う可能性があります。

職務満足――何に満足して働くのか

職務満足は、自分の仕事に対する評価や満足感を表します。仕事内容、成長機会、人間関係、労働条件など、注目する側面はさまざまです。

満足度を質問紙で尋ねれば数値を集められます。しかし、平均値が低いだけでは理由は特定できません。「何について」「誰が」「どんな状況で」満足しにくいのかを丁寧に調べる必要があります。

キャリア――働きながら何を選ぶのか

キャリアは、就職先を一度選んで終わるものではありません。仕事を続けたり、役割を変えたり、学び直したりする過程も含めて考えます。働く人が自分の経験や価値観をどう捉え、次の選択をするかがテーマになります。

四つの研究テーマは、次の図のように「働く心理」を異なる角度から眺める入口です。

モチベーション・リーダーシップ・職務満足・キャリアの四つの研究テーマ

一人のキャリア上の悩みに、職務満足や上司の関わりが重なることもあります。

人と仕事の関係をどう調べる?

採用・選抜――何を根拠に人を選ぶか

人と仕事の適合を考えるには、まず仕事を具体的に理解する必要があります。たとえば「対人能力が高い人」という曖昧な表現だけでは、窓口業務に必要な説明、調整、記録などのどの行動を見たいのか分かりません。業務内容と必要な行動を整理し、何をどう評価するか考えます。

採用の手段には面接や課題、心理検査などがありますが、どれも万能ではありません。評価方法が目的の仕事と関係するか、候補者に公平か、複数の情報をどう組み合わせるかを検討します。「性格検査のこの点数なら必ず活躍する」という単純な予測は避けます。産業・組織心理学は、経験や印象だけで選ぶ前に、評価の根拠と限界を問い直す視点を与えます。SIOPの教育・訓練ガイドラインも、職務分析、採用・選抜・配置、個人の評価を関連する研究領域として挙げています。

配置と人材育成――仕事を始めてからも続く問い

採用後も、人と仕事の関係は変わります。新しい業務を覚えるとき、研修内容は実際の業務に結びついているか。上司のフィードバックを本人が次の行動に生かせるか。役割が変わったとき、これまでの経験がどのように役立つか。こうした問いは人材育成やキャリア形成に関わります。

配置を「本人の適性」だけで決めると、仕事の負担、必要な支援、本人の希望を見落とすかもしれません。一方で、希望だけを聞いて業務の条件を無視することもできません。個人と仕事、組織の条件を照らし合わせ、変更後にどう働けているか確かめます。

チームと組織の行動をどう調べる?

リーダーシップと情報共有

リーダーシップを研究するときは、立派なリーダーの性格を探すだけではありません。誰が目標を共有し、判断に必要な情報を伝え、困ったときに支援を得られるかを考えます。チームの経験や課題によって、求められる関わりも変わります。

たとえば複数の担当者が同じ利用者に対応する職場なら、個人が丁寧に仕事をしていても、引き継ぎが曖昧なら対応に食い違いが生まれます。本人の能力だけで説明せず、役割と情報共有の仕組みを調べるのが組織の視点です。

組織文化と組織の変化

組織文化とは、職場で共有される価値観や、行動の「当たり前」のあり方です。例えば「困ってもまず自分で解決する」ことが歓迎される職場と、早めに相談することが評価される職場では、同じ社員の行動が違って見えるかもしれません。ただし、どの職場にも一つの文化しかないわけではなく、部署や立場でも経験は異なります。

新しい制度を導入する際も、通知を出すだけで全員の行動が変わるとは限りません。誰に何が伝わり、現場の業務とどう関わり、困りごとが生じていないかを調べます。組織を変える提案をするときには、個人の意向と仕事の条件を確かめながら進める必要があります。SIOPの教育・訓練ガイドラインにも、集団・チーム、リーダーシップ、組織開発と変革が研究領域として示されています。

産業・組織心理学は仕事でどう使われる?

人事担当者は、採用方法や研修の効果を検討するときに役立てられます。例えば「採用後に必要な仕事の行動は何か」を先に整理すれば、何を評価するかが明確になります。一つの適性検査の点数だけで採否や配置を決めるのではなく、目的に合った複数の情報を扱うことが大切です。

管理職は、部下との面談や役割分担を考える場面で、動機づけやリーダーシップの知見を参照できます。キャリア支援に関わる人なら、個人の希望と職場で求められる役割の両方を聞く視点が役立ちます。

職場の問題への心理支援――本人と環境の双方を見る

産業保健や心理職の現場では、働く人のストレス、職場への適応、休業後の復帰などを考えるときに接点があります。本人の困りごとを聞くことに加えて、仕事量、役割、対人関係などの環境を把握する視点が必要です。ただし、相談内容を本人の了解なく職場へ伝えたり、心理職だけで配置や就業可否を決めたりする話ではありません。役割と情報共有の範囲は、本人の意向、守秘、担当者の権限を踏まえて確認します。

たとえば休業した働く人が復帰するときは、本人の状態だけでなく、仕事内容や受け入れ側の準備も検討します。厚生労働省の職場復帰支援の手引きは、事業場における復帰支援の流れを示しています。ここでの目的は、特定の診断に対する治療法を紹介することではなく、働く人への支援が職場の条件と切り離せないと理解することです。

心理学を学べば人の気持ちが読めるという話ではありません。仕事上の疑問を具体的にし、何が確かめられるかを考えることに価値があります。関連する資格や職場での役割は、後の節で紹介します。

【具体例】「やる気がない社員」をどう考える?

以下は説明のための架空例です。 ある部署で、社員の発言が減り、仕事の進みも遅くなりました。上司は「やる気がなくなったのでは」と考えています。

ここで本人の性格を原因と決める前に、複数の問いを立てます。次の整理は、原因を確定する診断表ではありません。

視点何を確かめるか次に検討できること
個人本人は仕事や現在の状態をどう捉えているか希望や困りごとを聞き、必要なら相談先を検討する
チーム指示や役割分担、相談のしやすさはどうか優先順位や引き継ぎを確かめる
組織仕事量、配置、評価の仕組みは変化したか仕事の条件や運用を点検する

本人への聞き取りと業務の確認を通じて、これらを照らし合わせます。健康上の事情があるなら、適切な窓口につなぐ必要もあります。

例えば、仕事量の変化と指示の曖昧さが見つかった場合、上司と本人が優先順位を確認し、一定期間後に負担や進み具合を振り返ることが考えられます。一方、本人の望みと違う配置が関わっていれば、キャリア面談が必要かもしれません。同じ「発言が減った」という現象でも、支援の対象も方法も異なります。

これは特定の原因や介入効果を実証した事例ではありません。複数の仮説を立て、本人の話と職場の情報を照らし合わせるという考え方を示しています。職場の印象だけで判断しないためには、調査の方法やデータの読み方も重要です。

公認心理師を目指す人にとって重要?

重要です。厚生労働省の大学における必要科目の資料には「産業・組織心理学」が示されています。含まれる事項は、①キャリア形成を含む職場の問題への心理支援、②組織における人の行動の二つです。この記事の前半で扱った動機づけやチーム、キャリアと、後半の仕事上の例を、この二つの柱に照らして振り返ると、科目の学習内容がつながります。大学院では「産業・労働分野に関する理論と支援の展開」が必要科目の一つです。制度や履修科目の最新情報は、厚生労働省の公認心理師案内と進学先の案内を確認してください。

なお、心理学検定の公式案内にも、B領域の一科目として「産業・組織」があります。公認心理師の大学科目と同じ名前に近いですが、二つは別の制度です。この記事は各試験の出題範囲を網羅する対策記事ではありません。

公認心理師の学習は医療場面に限りません。働く人の相談、キャリア形成に関わる悩み、組織の中で起きる行動を理解することにもつながります。ただし、学問としての産業・組織心理学と、個別の相談業務は同じものではありません。

産業・組織心理学に関わる資格と仕事

産業・組織心理学は資格の名前ではなく、仕事と職場における人の行動を研究する分野です。人事、管理職、産業保健など資格を問わず生かせる仕事もあります。一方、働く人の相談やキャリア形成の支援に関わる資格として、次の三つが挙げられます。資格を取得すれば特定の職に自動的に就けるという意味ではなく、何を支援する役割なのかを比べてみましょう。

産業カウンセラー

産業カウンセラーは、日本産業カウンセラー協会による資格です。協会は働く人の相談、企業・団体向けのカウンセリングや研修などを提供しています。職場での相談対応では、本人の悩みを丁寧に聴くことと、仕事量や人間関係、職場の仕組みという背景を理解することが接点になります。例えば「上司に相談しづらい」という訴えを、相談者の性格だけで説明せず、役割や職場内の情報共有も視野に入れます。産業カウンセラー資格そのものが、組織の人事決定や医療上の判断を行う権限を与えるわけではありません。

キャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントは、厚生労働省が案内する登録制の国家資格です。就職先を探す人だけでなく、働きながら役割の変化や学び直しに悩む人の職業生活設計、能力開発などの相談にも関わります。「今の仕事を続けるか」という相談なら、本人が大切にしたいことを確かめるだけでなく、仕事内容、異動や育成の仕組み、職場で選べる道を整理する際に、産業・組織心理学の視点が役立ちます。ただし、本人の代わりに職業選択を決めたり、心理状態を診断したりする仕事ではありません。

以下の記事もご参照ください。

キャリアコンサルタントに関わる3種類の国家資格

専業主婦からの転身も!キャリアコンサルタントの仕事内容

公認心理師

公認心理師は、心理学の知識と技術を用いる国家資格です。産業・労働の場では、働く人の心理的な困りごとや職場への適応に関する支援に接点があります。大学の必要科目に「産業・組織心理学」が含まれるのは、職場の問題への心理支援と、組織における人の行動をともに学ぶためです。

ストレスチェックは働く人の心理的な負担を把握し、健康上の問題を予防する制度で、産業保健の色合いが強い取り組みです。その集団ごとの集計・分析を職場環境の改善に生かす場面では、組織心理学が役立ちます。例えばある部署の結果を見たとき、「部署の人はストレスに弱い」と決めつけず、仕事量、役割分担、上司との情報共有、勤務形態などをほかの情報と照らして検討します。厚生労働省のストレスチェックに関する指針は、集団分析に基づく改善を検討する際、公認心理師を含む心理職から助言を受けることが望ましいと示しています。これは資格だけで集団分析や職場改善の全工程を担うという意味ではありません。個人が推測できる結果を不用意に共有せず、実施者、産業医、事業者などの役割と情報管理のルールに沿って扱います。

社会心理学・臨床心理学との違い

社会心理学は、人と人の関わりや集団、社会的な状況が心理と行動に及ぼす影響を幅広く研究します。産業・組織心理学は、そうした知見とも重なりながら、特に仕事や職場を文脈として扱います。職場の同調やチームでの意思決定は、両方の視点から研究できます。

臨床心理学は、心理的な困難の理解と支援を中心に扱います。働く人のメンタルヘルスでは重なりますが、産業・組織心理学には採用や人材育成、リーダーシップ、組織文化なども含まれます。分野間には重なりがあり、対立する分類ではありません。

産業・組織心理学を学ぶ面白さ

毎日の仕事で起きることが、そのまま研究の問いになります。「働きやすい職場とは」「良い評価とは」「人はいつ仕事を変えたいと思うのか」。経験則で語りがちな問いを、何を測り、誰と比較し、どこまで言えるかという観点から考えられます。

例えば、職場での満足度と離職意向に関連が見つかっても、それだけで「満足度を上げれば離職が必ず減る」とは言えません。ほかの要因や時間の前後関係も調べる必要があります。こうした慎重さは、職場で人を理解するうえでも役立ちます。

産業・組織心理学についてよくある質問

Q1.産業・組織心理学は、会社員のメンタルヘルスだけを扱いますか?

A. いいえ。ストレスや支援に加えて、採用、動機づけ、人材育成、チーム、キャリア、組織文化なども扱います。

Q2.産業心理学と組織心理学を別々に学ぶ必要がありますか?

A. 両者は研究対象が重なるため、まず「産業・組織心理学」として全体を学べます。人と仕事の適合、チームと組織の行動のどちらに関心が強いかによって、個々の研究をさらに詳しく学ぶとよいでしょう。

Q3.公認心理師試験にも関係しますか?

A. 公認心理師を目指す人が大学で学ぶ必要科目の一つです。ただし、大学科目としての範囲と国家試験の個々の出題内容は同一とは限りません。試験の出題範囲や受験情報は、当該年度の公式資料で確認してください。

Q4.会社員が学ぶ意味はありますか?

A. あります。自分の働き方やチームの問題を考えるとき、原因を一つに決めつけず、個人と環境の両面から確かめる視点が得られます。

まとめ

産業・組織心理学は、人と仕事の関係から、チームや組織における人の行動、職場の問題への心理支援まで扱う分野です。モチベーション、人間関係、キャリアは別々の話題に見えて、現実の職場では互いに関わっています。公認心理師の大学科目が一つの名称で示される理由も、このつながりから理解できます。

心理職を目指す人にも、人事やキャリア支援に関心のある人にも、働く人を理解する土台になるでしょう。まずは身近な仕事上の疑問を一つ選び、「本人」「チーム」「組織」の三つの視点から考えてみてください。

参考文献・参考資料