「カウンセリング」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。ただ話を聞くだけ、というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。それで本当に効果があるのか、疑問に思うかもしれませんね。カウンセリングには、ある条件の元で行うと効果的であることが証明されています。どのような効果があるのかや、どのような人に効果的なのかなどを、本記事で解説します。
カウンセリングはどういうもの?
カウンセリング(counseling)という言葉は、医療や福祉の場だけではなく、ビジネスシーンやサービスの場などでもよく耳にします。本来は、相談や助言という広い意味を持つ言葉ですが、ここでは「専門家による心のケア」としてのカウンセリングに的を当て、具体的にどんなものなのか、考えていきましょう。
カウンセリングとは
簡単に言うと、援助者であるカウンセラーが相談者であるクライエントに対して行う心理的な援助のことを指します。
特に、「話を聴く」といったイメージを持たれる方もおおいかもしれませんが、「言語及び非言語的なコミュニケーションを通して相手の行動変容を援助する人間関係」自体を指すといわれています。つまり、話を聴くなかで生まれる変化とその関係性も含めてカウンセリングと呼ぶのかもしれません。
また、実際のカウンセリングの場では、話を聴くだけでなく、心理検査や箱庭、絵画、ワークシートなど様々なツールを用いて進めていくことも多いです。さらには、1対1の場でなく、集団でおこなわれるグループカウンセリングなどもあります。
カウンセリングに期待できる効果
では、実際にカウンセリングをすることで得られる効果はどんなものがあるのでしょうか。ここでは大きく3つの効果にまとめてみました。
自分の心や状況を整理することができる
何かに行き詰まっているときは、自分の気持ちや置かれた状況を冷静に考えることが難しくなることがあります。
そんな時にカウンセラーに自分の気持ちや状況を話し、またカウンセラーはそのことを理解しようと努める中で質問や話した内容をまとめ返していきます。その作業を繰り返す中で、クライエントはどんなことで困っていて、自分はどうしたいのか、ということを客観的に整理することができます。
クライエント自身の解決できる力を引き出す
困った状況に1人立ち向かっているときは、解決策がないように感じることがあるかもしれません。
カウンセリングでは、状況に応じて必要な情報や心理教育などを解決のヒントを提供し、その人自身が解決できる力を引き出します。
悩みに伴走してくれる人がいる安心感
人間だれしも、1人では諦めてしまったり、投げ出したくなったりするようなこともあるかもしれません。そんなとき、伴走してくれる人がいるとどうでしょうか。もう少しだけその悩みと向き合ってみようかなと思えるかもしれません。また、カウンセリングの主体はクライエントあり、その人のペースに合わせて進んでいきます。そのため、安心感をもって悩みや問題に向き合うことができます。
カウンセリングはどのような人に効果的?効果がない人は?
カウンセリングに効果があるといっても、もちろんすべての人に効果があるわけではありません。効果が出やすい人、出にくい人の違いはどこにあるのでしょうか。
カウンセリングが効果を発揮する症状や病名
具体的に、うつ症状、不安症状、パニック症状など多くの心の困りごとにカウンセリングの効果が認められています。
また、カウンセリングは、「症状をなくすこと」だけを目的とするのではなく、クライエントがよりよく生きていく歩みをサポートするものであります。そのため、症状が治まった後の再発予防として、また具体的な症状がなくても「もっと自分らしく生きたい」といった人生をよりよくするための手段としても効果を発揮します。
カウンセリングを受けても効果が出にくい人
心の問題は、長年の積み重ねによって生じたことが多く、そのため解決していくことも「時間がかかる」と特徴があります。
そのため、カウンセリングに関しても同様に、実際に「変わった」と効果を感じるまで時間を要し、すぐに結果を求めてしまいがちの人にとって「効果が出てない」と感じる人もいるかもしれません。
また、カウンセリング効果に影響するものとしてクライエント自身の要因は40%、カウンセラーとクライエントの関係が30%ある(Lambert(1992):平木,2021)と言われています。このことから、クライエント自身の持っている力やカウンセリングへの姿勢なども大きくかかわっていることが考えられます。
カウンセリングの効果を証明する論文などはある?
カウンセリングの効果は、技法ごとに様々な研究がされ、実際の効果が証明されているものも多くあります。特に、カウンセリングの技法の1つである、認知行動療法は抑うつ症状を改善することや、再発予防にも効果が認められたといった報告がされています。
海外では多くの実証研究がなされていますが、日本国内ではまだ少なく、様々な領域で研究が積み重ねられている段階です。
カウンセリングの効果的な受け方
では、実際にカウンセリングを受けたい、と思ったら、どこから始めたらいいのでしょうか。相談機関の例とその探し方のポイントと効果的な受け方について紹介します。
相談機関の例
実際にカウンセリングを実施している場所として、以下の場所があげられます。
- 精神科や心療内科などの医療機関
- 個人が開業しているカウンセリング施設(○○相談室、○○カウンセリングルームなど)
- 地域の保健所や精神保健センターの相談窓口
- 学校や企業の相談室
- オンラインカウンセリングサービス
また、こちら↓のサイトから、臨床心理士がいる相談機関を検索することもできます。
臨床心理士に出会うには│一般社団法人日本臨床心理士会
カウンセラーの探し方
上述したようにカウンセリングを受けることができる場所は多くありますが、やはり信頼できる、安心できる相談機関であることが大切です。
見極めるポイントとしてカウンセラーの資格はどんなものなのか確認することをお勧めします。特に、資格取得まで長い教育が必須とされている臨床心理士や、心理援助の国家資格である公認心理師などの資格の有無は判断材料の1つになるかもしれません。
カウンセリングを効果的にするために相談者ができること
カウンセリングは、クライエントのための時間です。
そのため、クライエントは、カウンセラーに遠慮することなく、肩の力を抜いて自分の思いや考えをそのまま言葉にして話すことが大切なことだと筆者は思っています。
特に、カウンセリングを進める中で疑問や不満が湧いてくることもあるかと思います。そんなちょっとネガティブなことも含めて、言葉にしてみると、カウンセリングがぐっと進みます。
特に、カウンセリングの効果は、カウンセラーの技術だけでなく、クライエント自身の姿勢も効果に影響してくる、と言われていますので、少し前のめりになりながらカウンセラーと一緒に良いカウンセリングを作り上げていけるとよいのかもしれません。
また、現在医療機関に通院されている場合は、カウンセリングが適さない場合があります。必ず、医師にカウンセリングを受けていいか、確認してから検討してみてくださいね。
カウンセリングは、自分の人生と向き合う大切な時間
長い人生の中で、悩みや問題にぶつかることは誰しもあることかと思います。またその悩みや問題の背景には、自分の今までやこれからの人生の課題が隠れていることも多くあります。
そんな時は、1人で抱えすぎず、誰かとタッグを組んで問題の解決に向かうことはとても重要です。その方法の一つとしてカウンセリングがあるのかもしれません。
カウンセリングは、そんな悩みや問題の解決を通して、自分の人生と向きあい、よりよいものにしていく大切な時間になる、と思っています。
参考文献
『カウンセリングの理論』國分康孝(著)、誠信書房
『これからのカウンセリングの流れ―統合的心理療法と多元的アプローチ』平木典子
『日本における心理士によるうつ病に対する認知行動療法の系統的レビュー』佐藤寛、丹野義彦