「エリクソンの発達段階」に学ぶ子どもの成長に大切なこと

エリクソン(※1)の発達段階は、人間の発達段階を8段階に分類し、心理的課題と危機、課題を達成すると獲得できる要素をまとめたものです。今回は家庭で暮らすことが多い、乳幼児期~青年期までの発達段階を紹介します。獲得してほしい課題、獲得できない場合の影響、どのようにうめていくとよいか(※2)をお伝えしますので、お子さんと接するとき意識してみてください。

(※1)エリクソン=アメリカ合衆国の発達心理学者  
(※2)個人の見解を含みます。

笑顔の子ども
Lubov LisitsaによるPixabayからの画像
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0~2歳(乳児期):基本的信頼感vs不信感

「自分は生きていてもいい存在」と思える人生の土台となる時期です。赤ちゃんはお腹がすいたり、オムツがぬれたりすると泣いて大人にメッセージを送ります。世話をして不安や不快を取り除き、温かく迎えてくれた経験を繰り返すことにより、信頼感と希望を持ち信じる力が身に付きます。

しかし、自分の不安や不快を取り除いてくれた経験が少ない場合、不信感が強くなり悲観的で傷つきやすくなります。不信感の経験がまったくないのも警戒心がなくなるので、無理のない範囲でバランスよく答えてあげるとよいと思います。

不信感をうめるには、スキンシップが有効です。抱っこや、マッサージ、温かい言葉をかけることが大切になります。

2~3歳(幼児前期): 自律性vs恥・疑い

能力が発達し活動範囲も広がり、自我が芽生える時期です。

自分でやりたいけれど上手くできないことも多いので、失敗しても受け入れてあげる環境が大切です。「自分でやりたい!」となれば意志力を獲得でき、自律性が育っていきます。

しかし、親の禁止や命令が厳しく、失敗を過度に叱ると「自分は駄目だ」と恥を感じやすく、劣等感の根っこになります。劣っているところを見せないように攻撃的になることもあります。また、今までなんでも受け入れていたのが、生まれて初めて禁止(しつけ)が始まることにより「恥と疑い」を感じやすくなります。

恥・疑いをうめるには、セルフコントロールの訓練が大切です。

3~6歳(幼児後期):自発性vs罪悪感

運動能力、言語能力、想像力が発達する時期です。自我が芽生え、自己主張が強くなるので、新しいことにたくさんチャレンジしてみるとよいでしょう。自発的で物事を率先する主導権(自発性・積極性)を獲得すると、決意できるようになります。

しかし、頭ごなしに押さえつけられる経験が多いと罪悪感になります。罪悪感が強すぎると物事を率先する主導権が取れなくなり、無気力・逃避・消極的になります。罪悪感をうめるには、自分の良いところを探していくことが大切です。

6 ~12歳(児童期):勤勉性vs劣等感

集団で遊ぶ子どもたち
Esther MerbtによるPixabayからの画像

生活の場所・時間が家庭から学校になり、集団生活をする時期です。テストや通知表など、他人と比べることも多くなり結果を評価されるようになります。頑張って苦労を乗り越えられるよう言葉かけをする、結果だけではなくその過程もしっかりみて認めるなどサポートしていくことが大切です。

勤勉性を獲得すると「自分はできる!大丈夫!」という自信を持てます。しかし、しつけが厳しい、過保護、過干渉だと集中力が損なわれ、自分から学ばなくなります。それが劣等感を作り進行すると「私はダメだ。何もできない」と固定観念になります。

劣等感をうめるには、遊びで回復することが有効です。遊びは大人になってから過去のことを立て直すのに重要な役割があります。遊びを通して、アイデアを出し工夫して物を作ることができるので、心と身体を使って思い切り遊ぶ体験が大切です。

12 ~18歳(青年期・思春期):同一性vs同一性拡散

自分自身は何なのか、自分は何になるのか、自分をみつめ自分自身について悩む時期です。
同一性は、アイデンティティともいい、「自分らしさ」「自分が誰なのか知ること」をいいます。同一性ができ、自己が確立すると自分を受け入れられるようになります。そうなると、自分で選んだ価値観を信じて、貢献していける誠実さを獲得できます。

しかし、自分のことがわからないと、何のために生きているのか悩むようになります。これを同一性拡散といいます。

同一性拡散をうめるには、自分の居場所を見つけていくことが大切です。

青年期が終わっても

  • 成人期(初期成人期):親密性vs孤立 獲得すると「愛」という力
  • 親となる時期(壮年期):世代性vs停滞 次世代へ貢献することにより「世話」という力
  • 老年期:自己統合vs絶望 満足した人生 獲得すると「知恵」という力

と発達段階は続きます。

階段を登る青年
mohamed HassanによるPixabayからの画像

人はいつからでもやり直すことができる

過ぎてしまった時期の課題をクリアできなかった・・・。その場合でも、安心してください。人はいつからでもたて直していくことができます。クリアできなかった段階の課題を再体験することで、うめていくことができます。もちろん大人になっても大丈夫です。親となった今でも、クリアできなかった課題をうめることにより、お子さんと笑顔で接する時間も増えていくと思います。子育てを、人間成長につながるパワーとして変えていけたら素敵ですね。

参考文献

アイデンティティ ――青年と危機―― エリク・H・エリクソン著 中島由恵訳 新曜社 2017年11月
パーソナリティ形成の心理学 青柳肇・杉山憲司 編著 福村出版 1996年6月

この記事を書いた人
香西浬希(こうざい りの)

元精神科ナースの開業カウンセラー&占い師。HSP(周囲の刺激に敏感な人)で小さい頃から自分を出せずに苦しむが、さまざまなコーチングやカウンセリングなどの講座を受けて克服。関連する多くの資格を持つ。

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